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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

それに、早寝の功徳もやっぱり利き目を現しているのだと信じます。

庭の八ツ手の木の下に一本榧がありました。南向の庭だがすぐおとなりの羽目でそこは日の目ささずいじけていた、それを、去年の夏まえに、八ツ手をうごかしたとき、一緒にうごかし東の竹垣のところへおきました。去年中は折角うつしたのに何の功もなく相変らずちぢけたままで居ましたところが、この春は猛然と新芽を繁らし一躍七八寸大きくなりました、丈も横も。一年経ってあらわれました。そういうわけなのでしょうね、私も。益※(二の字点、1-2-22)気をつけて早ね早おきを守りましょう。早おきすると独りの暮しも気が楽です。先のようだと、おきぬけにお客に来られたり、商人にたのみたいものをたのまずかえられたり、間誤付くこと多く、いやでした。今は、十時以後に来る大抵の御用ききはちゃんと必要に応じて間に合わせられるから。

きょうは、一日例の本よみ。海老茶色の本は、私にくっついて机の上から、タンスの上、ちゃぶ台の横と移りつつ。こういう風にすこしは私の体について動けるぐらい馴れて来たのは、わるくありませんでしょう? このこともおかげさまと申さねばなりません。