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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
寿江子が散歩からかえって来ました。奇想天外ななりで。雨が降っていて、今着られる服はちぢむというので、外套の下とは云いながら私の大前かけにブラウスといういでたちで。眠るために歩かなければならないというのだから、まだまだ可哀そうなものですね。
私は、お湯をどっさりわかして、ホーサンを入れて体をさっぱりと拭いて、そして、これを書いていたというわけです。
隆ちゃんから手紙来。どこかへ行っていて、私が五月十日ごろだした手紙をやっと見たと云って五月二十四日づけ。やっぱり達ちゃんのところとは大分ちがいますね。この間送った写真(あなたの方とおそろい)もきっと随分手間がかかることでしょう。何にもこまかいことなく、只手紙の礼、お母さん御上京のよろこびだけです。あなたに呉々よろしくとのこと。
本月二人に送るものには、面蚊帖を入れてやりましょう、これは顔をつつむ蚊帖です。それに隆ちゃんには肩ぶとん。ものをかつぐとき当てるものです。それに、一寸した下駄みたいなもの。隆ちゃんは、手紙書いた日に酒、タバコ、ビールの配給をうけた由です。どのあたりにいるのか、凡そ見当もつかない手紙でした。