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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
少なからず満足のようです。仰云った通りにしてこれもようございました。
この間のお手紙で、ユリすこしやせるかなと笑っていらしったけれど、どうも予言的中らしゅうございます。しかも、それは、ひとから見ればちっとも分らないどころか全く円いという事情故、閉口ね。いろいろでやせる次第です。
咲枝ちゃん早く赤んぼうんでくれるといいと思います。只今お医者のところへ行って留守。太郎もどっかで遊んでいて家の中はしずかです。きょうは扇子をつかっていながら、空間というものと、その空間をみたすいろいろのものについて感想しきりでした。人間が、その理性によって天体をわがものとしたということは、何というよろこびと、ほこりでしょう。直感の経験では分らない空間を、測定し、把握し、その運行をとらえたのは、何という人間らしいひろがりでしょう。空間の主人であり得るということは、時に人間のほこりであり、時に反対物でもあります。科学という名で生じることもある。
文学が、文学性という言葉でいろいろ逸脱してゆくのは意味ふかい見ものです。自分の心持を文学性という表現で通用させて。芥川賞の中里恒子は、中村武羅夫あたりが、教養の高さをしきりに云々している。