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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
そこには人間の理智の明るさが透っていて、明確であることからの動かしがたさ、智慧のよろこびがむせんでいる。
われわれの日常では、ガンコさからの不動性、強情からの不自由というものを何と見すぎていることでしょう。無知や偏狭からの固定を何と見ているでしょう。それが多いために、それが多い程一般の暗愚は深いから、光り、動き、流れ、生々として自身の生命をよろこびつつ、しかも不合理ではあり得ないという精神の自然さが、その自然さというものとしてのみこめない程なのですね。人間が人間の精神の自然から、こんなに遠いということ、そこに愕きが新たにされなければなりません。新しい文学の精神、エスプリと云われるものがここにあります。フランスの明智、良識よりは更に一歩進んだものとしての。
抽象的にかかれましたが、ユリの心持はわかって下さるでしょう? ねえ。そして、これを日常のなかにもち来すと、こういう反省となって、私に永遠の花嫁としての涙を潸然と流させるの。私は果してあなたにふさわしいだけ、いろいろのことして来ているだろうか? いろいろのことしてあげているかしら? そして自分の勉強も、と。