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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
あなたへ呉々もよろしくとのことです。
島田から、御中元をおうけとりになった手紙来ました。あちらは旱バツですって。七十年来の。植つけの不能であったところが千何百町歩。中途で枯死したのが千何百町歩。日夜雨乞いで大変だそうです。本年は肥料もずっと高かったところへそれでは困るでしょうね。慈雨を待つ、とお手紙にあり、実感をもって書かれていることがわかる程です。それでも家じゅう皆丈夫の由。お母さんもお元気の由です。何年も前、私がいくらそれが出放題のこしらえごとだと申しても、本当とお思いになれなかったことも、今ではやはりそうであったかとお思いなされるところもありましょうし、何よりです。
間接に深められてゆく感動というようなものが甚しくて、ユリはこの頃、まことに引しまった心持です。一面に堪えがたい優しさに溢れつつ。言葉すくなく、思い多く暮して居ります。あなたにさっぱりした浴衣でもうしろからきせかけて、どんなに、「御苦労様ね」と云って上げたいでしょう!
手紙順ぐりついて居るでしょうか。きょうは夜になるまでに『音楽評論』へ五六枚の感想(音楽について)をかこうと思います。