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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
七月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
七月二十三日 第六十八信
きのうから降ったりやんだりの天気ですね。温度は低いのだけれども、今日(八十二度)湿気がきついので、何となく体は苦しい様子です。いかがな調子ですか。あれきり平穏でしょうか。二人一度になったあとは、きっとお疲れだろうと気がかりです。この間うちはやむを得なかったの、火木土だもので。この次は重ならないよう気をつけます。
御注文の本、三冊はあって速達しました。月曜お手元につくでしょう。
それから計温器のことは安田博士にききました。あのひとは呼吸器の専門ですが、やはり人間の体と自然との関係の微妙さを経験によってつよく感じているたちですね、明治時代、呼吸器に関する専門家は、熱がなければよし、あればよくないと、きかい的に扱ったが、現代最新の方法では、本人の体の気分の自覚で、無熱に近く或は無熱でも、自覚のよくない感じがあれば、それを無視せずやってゆくのだそうです。反対の場合もあるわけです。実に箇々別々の由。絶対安静という共通な注意のほかは、全く一人一人自分自分で発見してゆくべきものをもっている由。