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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

伊豆と云えば、「生活の探求」は「正月の騒ぎがすんでから」伊豆の温泉へ川端、深田等々氏と出かけて、出京、中央公論社の用事をすませて両国の某という料理店へ車を駆る、というような日記をかいて居ます。作家の日記というものはなかなか感想をそそる。稲ちゃんは、『新潮』の口絵の写真にそえた文章で、この数年間自分は写真をとるとき笑ってしまう癖がついているが今日は笑っていない。これからは又元にかえって写真機の前で笑わなくなるだろうと思う。ただ目だけは子供のようにハッキリあいていたい、と書いている。これなども実にいろいろ感じられる言葉ですね。成長、自分の力で成長してゆこうとする努力の、そのときどきの姿がまざまざとうつっている。楽でなさが私などには犇とわかる。

明日出かけるのをたのしみにしているのですが、あしたの晩は眠れるかしら。十七日の夜はね、ああ何と眼の中がいい心持に楽になったのだろうと感じて、幾条も光の箭にいられたような体じゅうの気持で、なかなか眠れませんでした。

いよいよ寿江子の絵が出来上りました。本人は失敗失敗というが、それでもこの室のこの隅からの感じはわかる。