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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

島田からお手紙で、富雄さんが手つだうことはお断りになったそうですね。運転手が、却って気兼ねだからというからとのことです。仲仕もおいていらっしゃる由。夜の仕事はやめて安全第一にやっていらっしゃる由、そちらにもそのようなおたよりがありましたでしょう。野原では春になって土地を処分なさる由。林町のうちは水道が凍って風呂がたてられず、目白へ風呂を貰いに来る由。大笑いをしてしまいました。きっと今に「今何時でしょうって目白へききに来るんだろう」。だって林町は家じゅう電気時計で、停電すればそれっきり。目白のはボンボン時計ですから。周囲の一般のレベルをぬきにして一つの家の中だけやったって、不便のときは、極度に不便になる。こういう悲喜劇があるから、私は石炭が質を低下させられるつれ煙突掃除を余計たのむので閉口しつつ、あたり前のフロが大好き。太郎はカゼがなおって遊びに来て、「アッコオバチャン、おぽんぽが痛くなくなったらアボチャン、トシマエンヘツレテッテヤルヨ」と大いに慰めてくれました。では又明日。この分ではしずかな天気そうですね。おめにかかっていろいろ。栄さんの小説が芥川賞候補に上っている由。