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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
それでいて、あたりは森ーんとしているのです。そこを通る車はひとりでにすっかり速力をおとして、殆ど止る位にして通る。いかにも大きい都会の出来事の感じです。
日比谷では午後四時まで。きげんよい笑顔でした。さっぱりした物云いでした。かえり電車で来たらひどい混みようで、立っている脚に汗が流れました。窓の横棒に制帽の庇をすりつけながら居眠りしていて、時々片脚をびくりとさせ、今にもこけそうになっているどこかの給仕のような少年もいました。五時頃の市電はそういう乗客を満載です。
太郎が先週の日曜日に急に父さんにつれられて開成山に行ったの御話しいたしましたろうか。この頃はいろいろ事務の用事が多くて、家の連中のことちっともお話ししないでいますね。太郎、大変食堂車に乗りたいのですって。ニュース映画で見て以来。それで開成山に行くとき、昼になったので、食堂車へ行こうとお父さんが云ったら、相当てれた顔をした由。そんなところなかなか面白い。そこでランチをたべた由です。今頃は盛にどろこんこになって、あっちの友達と遊んでいるでしょう。水曜日に寿江子が行きました。一同は九月の三日ごろかえって来る由です。