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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

この頃平常は夜十時半前後、朝六・半前後です。本月今までのところ出勤は二日一日きり(これから先には二十日すぎにありますが)。三日にかきはじめようとしたら緑郎のことなど気になって、自分の心にある都会の景色が甦って大分亢奮してね、書くような心持にならず。四日、五、六日とかかって、「分流」大正八年頃迄三十五枚書きました。読書は出勤のあった頃は夜が多く、今は午後をつかいます。そういう風にして暮すこと、その暮しぶりに意味を感じて本気なわけです。こんなことが一方では図書館へ出かけて、ねばりもするような面もこしらえているのだから面白いものです。何しろ図書館をいかに活かすかということについて大先輩に親シャしているわけですから。婦人の工場監督官が新設されなければ(今日)ならないという意見が、あちこちに出て来て居ます。しかし、本のなかで見えているような活動を、なし得る人が果して何人あるでしょうね。土台の問題があるのだから。住宅のこともなかなかです。三畳に三人雑居でやり切れなくて女郎屋から工場へかよっている若い労働者がいる(『中央公論』)そうです。間代の高さより家がないのね。