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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
この作品のかき出しは「心の中に不幸を、人の知らぬ秘密として持っている人々の悲しさは」云々。この間あなたが仰云った「一生懸命さには同情するが」という言葉がその最も複雑な内容で思われます。この作者のつれ合いはこの作品をよんで果してどのような感想を抱くでしょう。
これ(今書いているもの)はもうあと十五枚ほど明日のうちにかき上げて、それからキューリイ夫人が大戦のときラジウムをもって人々をたすけたことを人類への愛という立場から、婦人のために二十枚ほどかき、それから小説にとりかかります。『読売』の月評はことわりました。目の先がクシャクシャするようなものを、こちらに何かテーマがあってでもなく読む暇はないから。今ずっとかいている歴史的なものを一貫してゆくことが、チビチビ月評より遙にまさる自他ともへの勉強ですから。
これをかきつづけて小説をかいて、勉学して、なかなかそれ以上のひまがない。「過渡期の道標」が座右に常にあります。そして、それは背骨となって、書くもののなかに入って来るのです。
この仕事をまとめるとき面白い有益な年表と図書目録をつけます。それはS夫人にやって貰います。