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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

そういうものの由。メイソウさんの奥さんが眼科を開業したのですってね。そしたら繁昌して、旦那さんすこし押され気味だって。そのことをあなたが可笑しがっていらっしゃるという話ききました。私はどっちも初耳だったから、二重に面白くて笑いました。でも結構ですね、それですっかり生活がしゃんとゆくでしょう、もう何年も会いませんが。重治さんのところでは卯女が大分可愛くなり、もう両足をなげ出して、両手でビンを持ってお乳をのむ由です。その乳に入れる砂糖が世田ヶ谷にはない。それで栄さんのところへ電報が来たので、六軒歩いたら二軒が半斤ずつ売ったそうです。昔中野は「砂糖の話」というのをかきました。が、こういう物語がおこるとは思っていなかったでしょうね。私は当分中野さんへ何かあげるならサトウにしましょう。うちだって、ありはしないが。中野しきりに小説をかきます。身のまわりのこと、子供の泣くこと、ねむらぬこと等々。せっせと書いて彼の癖の独白体を脱しなければいけないが、どうも益※(二の字点、1-2-22)独白になるのではないかしら。「子を育てるためには先ずその子をくう話」というゴーゴリの題のようなわけです。