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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

まぜず。

御注文の本お送りいたします。もう一つ問い合わせの返事はまだですが、いずれこの次までには。

ユリは目玉パチクリです。炭が炭やになくなったから。愈※(二の字点、1-2-22)衛生的生活ね、この冬は。余り炭火がすきでないから助かりますね。ではどうぞお元気で。あした太郎イモ掘りなのに雨で可哀そうに、お流れでしょう。今九時打ちました。さアさア、では。

十月十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

十月十四日  第九十五信

何という目ざめの心地だったでしょう。ここの門のわきに一本木犀の木があって、これまで花をつけたことがなかったのに、ゆうべ見たら黄色の濃い花を葉がくれにつけていて、かすかな秋の花の匂いを漂わしていました。S子さんが「あら、いいことがあるわ、何か」と云いました。その一枝を小さく折って来て、机の上の壺にさしてあります。匂いというほどの匂いはないのだけれど。きょうはいいお天気。髪を洗います。橙のつゆをしぼって髪をゆすぐ水に入れます。ベッドの日向にはあなたの着物やかけぶとんやがほしてある。きょうは、もう一つと美味しがっていうのに、ああいいよと答えられているなかから明けました。