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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

と云った彼の言葉によって、この頃の妙な古典ありがたやへの一針となしたわけです。只の鑑賞批評をする柄でもありませんから。日本人が今日に日本人としての心を見出し得ないこと、そこに確信をもち得ないこと、そんなことがあってしかるべきではないのですから。

きょう書いて下さる手紙、いつ着くのでしょうね。早く 来い、来い。

今夜から小説です。これからこねはじめ。『新潮』へかいたものの続篇をなすものですが。時間と心理の発展の点で。

小説が出来るということと、つくるということのちがいも、いろいろ面白く考えられます。出来るのが自然、つくるのが作為と分けられるうちはまだ初歩ね。出来つつつくるという微妙な創造の過程があって。

二十八日

二十五日づけのお手紙けさ着きました。間に日曜日が入っているからこれで普通です。どうもありがとう。リアリズムの土台について云われていること、いろいろ暗示に富んで居り、考える点があり、これもありがとう。作品の世界のつながりで浮ぶ場合、そのありようは、もっとずっと歴史的で(質を云えば勿論、お手紙に云われている点もそこに入るのですが、時間的に)その大局からの必然の題材というわけなのです。