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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
この頃はどんなひとでも顔を見ると真先に云うのは、米、木炭、マッチの話です、女のひとたちお召のゾロリとしたなりで、その話です。島田の方では近所に五十歳ぐらいの女のひとり身のひとがいて、よくお手つだいしますって。昔からよくたのんでいたひとだそうですが。ですから安心ね。それに達ちゃんいよいよ五月にはかえる予定だそうです。本当? わかるの? と私が怪しんだら、本当の由、お母さん益※(二の字点、1-2-22)おたのしみで、私たちもうれしゅうございますね。そしたらきっとすぐお嫁さんの話で、その方もきまれば私たちは本当に安心ね。何と気が休まるでしょう。お母さんが、五月迄と思って待っていらっしゃるお気持、沁々思いやられます。けさは、私はどうしても終る仕事があって一日家居。多賀ちゃんもひとりで市場まで行ったりして、やっぱり家居。明日は私は外出で、たかちゃん障子を張ってくれますって。私はうれしいわ。
二十日づけのお手紙、けさ着。ではこれから卵さし入れましょう。卵に声なきを如何せん。そんな詩をよんだ女は、支那の女流詩人にも居りませんね。あれほど支那の古典抒情詩の中には、「郎君今何処にあってかこの月を見ん」