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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

目白のお医者様に寿江子からきいてもらったら、よく分らないが、あっそれは、とすぐ見当のついた風だったそうです。会って話すということでしたがやたらに忙しくて、まだ見えません。あすこでは女の子が生れました。戸台さんという家には初めて男の子が生れました。女の子の名は晴子だそうです。どっちの赤ちゃんもまだ見ませんが。あすこでは悠吉さんという二番目の、私の名づけ子が秀逸よ。

これをかいている机に坐って、みどり色の原稿紙に、製図用の五Bでかく様子が御想像になれますか。坐ってものをかくことも馴れないと、よそへ行ってチャブ台で何かするのに困るでしょう? あなたはずっと坐る机で、くたびれると、よく畳へ背中をおのばしになったことね。坐る机だと、休むときああしたくなりますね、私はふとんをのべてあるの、そして背中がつまると、そこに横になります。

いろいろの道具だてばかり云っている人の間にいると、どんなに其が一つの不便で、不幸でさえあるかと思い、自分はあなたのおっしゃる口真似ではないが、全く、机、ふとん、紙、エン筆さえあれば安心してやってゆける習慣をもちたいと思います。小説というものは、どんなところででもよまれるべきものですから、云わばどんなところででもかかれていいわけなのでしょう。