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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
又面白いことに、そういう風に作者の腹と紙とが同一水平でとけなければいい小説も出来ないところもあったりして。
ぐみ頭のことにふれ、それもわるくないと書きましたけれど、負けおしみではないようです。そして、こんな風に思うの。私はこれから主として小説だけ書き、ほかの作家とまるでどこかちがう小説をかきたいものだと。つまり小説しか書けない頭ではなくてかく小説。それには何かの面白さ、構造、規模があるでしょう、と。なお可笑しいのは、私は詩的な要素をたっぷりもっているが、詩人ではないということなの。だって、段々体が平常に近くなって来たら、御覧のとおり、私は私たち愛唱の詩を散文で話しはじめ、一ころのように眠れない頭にこりかたまった一行一行をおめにかけることはなくなってしまったのですもの。二月下旬「よろこび」と「円き盃」という二つをかいてからは一つもかきません。散文で印象がうつされます。(ここまで書いたら夕飯、そのあとへ久々で目白のお医者が見えました。私のグミ頭や顔がしびれるようなのは、体が或る程度まで癒って来たことによるリアクションの由。生理上の反動は、或る丈夫さがつかなければ生じない由。