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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

北の方の人々は地の柔かい深さを感じさせ、あちらは、石の切り出した厚みを感じさせ、そのちがいも面白く思われます。人の性格かと思ったけれどもっとひろい共通性のあるものなのね。岩本のおばさまったら、私が丁度いい位にやせたと、島田のお母さんに云っておこうとお笑いでした。でも私は、もっと円くなる予定ですし、そうでないと十分の体でないのだから、見合わせて頂きたいと笑いました。おとしよりの方は、私の円いのに心ひそかに恐縮していらっしゃるのがわかって全く可笑しい。わたしが、ハアハア笑って、一向結構という風で円くているから、苦情も仰言れなくて、何とお可哀そうなことでしょう(!)おや、雨が降り出しました。もう五時近いからおつきになったでしょう。下北沢でおりるのですって。

珍しいお客様でお話がこまごまとしているから私は疲れました。それでもいろんな噂が珍らしくてこの手紙さしあげます。大阪の明石さんでなかったから大助りよ。まともな配給で毎日暮している人でなくては話にもなりませんからね。それでも軍人さんだから世間にないカンヅメが買えるというのでおみやげに鮭のカンヅメ頂きました。