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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
この頃のようにすこし疲れれば床にいる術を覚えたからきっとこれから体のもちは上手になるでしょう。寿江子は眼も悪くなって来ていて、近く池袋の近藤という眼科の人のところへ二人で行きます。あの人は遠視ですが、糖尿からの白内障でなければ幸ですが。そうだとことね。手術の出来る迄視力を失って行かねばならないし、糖尿末期に起ることで、白秋にしろ視力を失ってからじき肺エソになりました。神経疲労位であったら大助かりです。池袋へは来週のうちに参ります。母も眼の障害と内臓の病気は全く併行的でした。
この間のハガキのお礼呉々ことづかって居ります。
小説のこと。ありがとう。あなたは余りはっきりして何とも二の句のつげない比喩でものをおっしゃるから、私もあっさり兜をぬがざるを得ません。私のような粗忽なものでも、行先違いの便船にのっても一向進んだことにはならない道理だと云われて、イヤそうでもないかもしれない。うまく漂流するかもしれなくてよ、とは申しかねます。箇人的なあせりはないのよ。その点は御安心下さい。そういう焦慮が何ものをももたらさないことは狭い見聞でもよくわかり、まして金銭的展開などは大局からみて考えられもしません。