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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
それはあの二人はどうせ切ってもきれない仲だけれども、いづみ子は次第に目ざめる深い女の心でひとしおそのことをつよく感じ、自分たちの結びつきの又となさについて感銘している様子です。好ちゃんは、あのこのつい近所までよく行くことがあるらしいのよ。でも御存知のとおり兵隊さんでしょう? 時間があるしきまりがあるし、どんなにかああついそこと思うのでしょうが、よってゆくというわけに行かないらしいの。それが犇といづみ子にわかるのよ、ね。ですからいづみ子にしろ並々ならぬ心持で、どこかそこを通っている好ちゃんの上を思いやるという次第でしょう、いくとおりもの家並や街筋やに遮られて、好ちゃんの歩いてゆくその道は見えないにしろ、いづみ子の胸に、あの爽やかで力にみち、よろこびにみちた姿が映らないというわけがありません。いづみ子は日本の女らしい、いじらしい表現でこんな風に云って居ります。
わたしは日高川の清姫ですから(ユーモアもあるから、大したものよ)自分のからだで海も山も越すことはいといません。けれども、あのひとのおかれている義務のことを考えると、わたしが身をもむようにしたら却ってどんな思いでしょうと思われて、ほんとに私は行儀よいこになります。