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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
そして何とものを知らなかったでしょう、今は惜しいと思います、どうしてもっと細かく見聞を書いておかなかったでしょう。旅行のつれの関係もあり、ごく世俗的な興味や関心で消費していた点もあったけれど。私は筆まめに書きはしても、実質の飛躍のなかった人よりましというのがせめてもの慰めです。あとから書いた見聞の紹介はどっさりありましたけれども。
例えばバクー大学にスキタイ文化の遺跡の集められたものがあって、これは日本の天平時代の美術と全く通じます。支那を通って日本に入ったのですが。タシケントの手前の蒙古にあったというギリシア文化と支那の文化の混交した古都のことなんか何も知らず、あのバクー大学の考古学参考室なんか、今考えると惜しいの惜しくないの。お察し下さい。大東亜という言葉の本当のよりどころは、そういう大きい文化の流れをとらえなければならない筈でしょうし。
そのときは、ああ奈良朝の美術はここから来ていると漠然思ったきりで、ちっとも深く勉強しませんでした。惜しかったことね。固定して古典詮索の興味よりも、交易商業というようなことで古代の人間が不便な中を大きく動いたそこが面白いのね、ホグベンが再発見した支那から欧州への「絹の道」