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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

あんなに暑かったり寒かったりだったのですものね。

さて、本をまとめて、しまつすることも終り、これで今月は呼吸がつづくから、これであなたの夜具のことをちゃんとしまい、お義理の訪問をすこしずつすまして、やれ、と仕事に落付けるわけになりました。古本の公価がきまって、面白いのよ。来てくれた人は目白の先生の紹介で律気な人だもんだから、一冊一冊大体発行年代と定価見くらべて虎の巻を出して字引のようにして買い値をきめてゆきます。つい去年の秋ごろは、一円五六十銭の小説は大体半分で一束にかっさらって行ったのとは大ちがいで、思ったよりまとまり(二百冊ぐらい)そちらにも、すこしお送りいたしておきます。ちびちびと、点滴石を穿つ式にしておかないとね。三ヵ月毎に銀行に払うものがあるから。今月は其で。

お義理の訪問というのは、私が病気になったとき、大瀧の伯父(父の妹の良人)やその他わざわざ来てくれた人のこと、うちの連中子供らしい人で、今まではっきり話に出なかったのよ。きいてみれば、夢中の間に心配して来てくれているのだから、少ししっかりして来たらやはりお礼に行かなくてはすまないというわけなの。