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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

あなたはもしかしたらお読みになったとき却って心づいていらしたかもしれないわね。

この詩の作者は珍らしく天真で、卑俗な羞らいの感情などからは、神々のように自由です。それだけ情感はみち溢れて、溢れる水がきらめくように充実していて、高い情熱の焔のためにかげを知らない風です。でもこんな詩をよむと、本当に親愛を感じるのですが、敏感なところがあって、あんまり人並の限界を超えた美しさへの傾注の深さを、その表現を、我からはじらうところがあるのね、しかも、決してその横溢を世俗の枠におさめておくことは不可能なのです。鳴りわたろうとする楽器なのね。そして、ここにそういう資質の独得な歓喜と悲劇ともふくまれているわけでしょう。

でも、この詩人はしあわせ者です。自分の天才をうながす啓示を常にもっているらしいから。これは人間の生き甲斐というべきであろうと思います。

十七日ごろには、新しいふとんを敷いて、さっぱりとくつろいでいらっしゃれたらうれしいと思います。

十五日にゆくときは、おしゃれをしようと考えて居ります。でも果して、どんなおしゃれが出来ることでしょう。春、あんまり大気に生気が充満すると雷鳴がおこり、ゴッホのあの美しい絵のように爛漫と荒々しくなります。