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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
それだから人間をあれだけ活かして動かせ、活人間として今日うけとれるのではないでしょうか。そうだとすれば、大きい文学は必ず、その時代の典型のテーマをもつべきであるし典型のテーマというものの深まりは今日ではもう世界史的スケールのものであり、それは単にマニラ紀行ならずという大課題が浮んで参ります。いつぞやシェクスピアの作品を分析したシルレルだかの本がありました。時代にふれて勿論いましたろうがテーマのそういう点についてそういう文学としての本質についてどうかかれていましたでしょう、大文学というものについてその骨格についてはなかなか深く、文学をそこで捕え得るか否か及びそれを作品化する力量の問題等興味つきません。日本文学の古典にしろ、国内的にそういう歴史は踏んで居ります。しかしシェクスピアのように人間爆発のモメントとして「誤解」はとらえられて居りません。近松が一番可能を示す作家ですが、作品の中ではどんなに展開しているでしょう。誤解以前の「約束」どおりの動きを人間の動きとして動かしがたくうけとって相剋する人間性だけを彼はとらえたと思いますが。そこに日本文学の根づよい特色があるわけでしょう。