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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

でしょう。

冬のかかりになって、あまり寒くならないうちとり変えるものは変えましょう。

シーツはそちらに代りがあるでしょうか。いずれ、一枚お送りいたします。シーツが大変なのよ、なくて。

取越し苦労とお笑いになるかも知れないけれども、備えあれば憂なし、と、あなたが教えて下さいました。

三月二十二日

三月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

三月二十九日

二十七日づけのお手紙頂きました。ポツポツと又つづけてかかなくてはならないから今日から始めましょう。

隆治さんの語学の本は、『馬来語四週間』と文京社、大学書林のとがなかったので、前に買えた会話手引と日泰馬来英対照の字引だけさし当り送りました。初めこしらえた小包には、文庫の『マノン・レスコオ』、『カルメン』と徳川時代にカムチャツカまで漂流しておどろくべき沈勇で善処して来た船頭重吉の太平洋漂流記というのが非常に面白く立派だったので、それを入れ、お茶、薬なども入れました。本だけを、ではすぐ送ります。重吉の話はやはりあちらでもどんなにか面白いでしょうと思います。まるで幼稚な方法で航海していなければならなかった時代にでも、重吉のような人物がいたということは愉快ですから。