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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
こんなに力をぬいてサラリと書いてさえこんなにしみる紙にGは迚も使えず。ほり込むように一字一字を書いてゆく愉快さもないというわけです。一工夫しなければなりますまい。
五月五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
きのうきょうの風のつよいことどうでしょう。けさまだすがすがしい朝の庭に、赤いつつじが咲いて楓の葉が青々とした下へ、三羽のつぐみが遊びに来ているのを見て大変奇麗だと思いました。少年時代に小鳥とりなどなさらなかって? 裏日本の方ではみんなやるようですね、つぐみはやや大きい黒っぽい鳥で、その色は単調に赤いつつじの色とよく似合って、ああこんな景色もあるかと感じました。
三十日のお手紙日曜日に頂きました。早速返事書きたかったけれども先週は疲れ月曜の疲労を予算に入れてのばしていたら、その日が一日ずって昨日となり、又明日があり結局きょうとなってやっぱりいくらかへばりの日にかくことになりました。
もう私の心持では、大きい字を巻紙につらねたような手紙ではたんのうせず、しかもこの位の字は相当の事業故、板ばさみで些か閉口です。本当に眼も永いことね、こんな字にしろ半分はカンで、長年の馴れでかくようなもので白い紙にゴミが散らばったような感じね。