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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

私は半分ボーとして机のところで息を入れているところ。この細かい字は何とかいてあるのでしょうね。

五月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(庫田※(「綴-糸」、第4水準2-3-63)「松林」の絵はがき)〕

きょうは八十一度になりました。五月初旬にこんな暑さということがあったでしょうか。明日は月曜日で出かけるから、せめて少しは涼しくなれと思って居ります、いそぎ紺ガスリお送りします。

この松は不自然と皆が云うが、私には昔の野原の海辺へ出る手前の道が思い出されます、きっとあなたもそうでしょう? 木の枝に蛇を下げた男の子がこんな松の間の道を歩いていました。

五月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(石井柏亭筆「佐野瀑図」の絵はがき)〕

五月九日

『万葉秀歌』はもう夙についていなければならないのに、うちにゴロゴロしていて本当に御免下さい。上巻はいいのだが下巻にしるししてしまって消してからでなくては駄目でついのびてしまいました。やっと人手がすこし出来、これからは何となし少し楽になるでしょう。この頃の生活から、私は又先頃は知らなかった修業をして面白く感じることが多くあります。