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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
01 一九三四年(昭和九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,990 字 · 30 页
バルザックが、今日いう意味ではリアリストでなかったのだし、彼のロマンチシズムがその時代の必然によって、リアリズムを既に内包していたこと、その二つの矛盾が作品のすべてに実に顕著に顕れていること、従って、林氏亀井氏保田与重郎氏の云う日本ロマン派がそのうちに内包し得るものは何であるかということなどなのです。十月にトゥルゲーニエフの研究を三十枚ばかり書いて、面白くよまれました。しかしバルザックはどういう風に出来るか。月曜日に毛糸の足袋と下着類と戦争論その他を入れます。私はこの頃になって、もう一遍一寸メーテルリンクをみて、何か発見して見たいと思うことがあります。それは、これまでの作家が運命というものについて、実に多く書いているが、メーテルリンクは彼の神秘主義で、青い鳥でそれをのりこえることを語ったと思う。賢こさというような力で、賢者がよく出たでしょう? 彼の作品には。悲劇というものも、私は又考え直して見たく思っている。メーテルリンクとは違うが(云うに及ばないとニヤリとされそうですね)私は過去の文学に規定されている悲劇というものの理解について疑問が出て来た。