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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

01 一九三四年(昭和九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,990 字 · 30 页

青空文庫

クリスマスカロルなど、スエ子がきのうよんで、何だかいやな気がしたと、ひどく気分的に表現していたが主人公がここでも、全くあり得ぬようにセンチメンタルに架空的にとらえられているのです。

ねえ、私は用心しなければいけませんね。こうやってかいていればいくらだって書いて、随筆幾つか分の手紙をかいてしまいそうです。私たちが暮して間もなくあなたは、私がどんな手紙をかくかしらと云っていらしったことがあったが、いかが? 私の手紙は。私の手紙には私の声が聞こえますか? 私のころころした恰好が髣髴いたしますか。その他さまざまの時に見える私が見えますか? 三日に余り久しぶりであなたの声を聞いて、私は今だに耳に感じがついて居ます。ここでさえペンをもっていると手がつめたい。(附録終り)

[自注1](不許)――この第一信は「不許可」で顕治にわたされなかった。万一のために保存されていたコピイによる。

[自注2]叔父上――顕治の父の実弟、山口県熊毛郡光井村にすんでいた。幼時から顕治を非常に愛し、小学校へはこの叔父の家から通った。

[自注3]林町――本郷区駒込林町二一 百合子の実家。

[自注4]父――百合子の実父、中條精一郎。