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ばくおう

獏鸚

海野 十三

「新青年」博文館、1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,493 字 · 33 页

青空文庫

この字句の中には、爆薬が破裂するその一週間前に導火線をもみ消すことができたとでもいうか、遂に開かないと思った落下傘が僅か地上百メートルで開いたとでもいうか、とにかく大困難を一瞬間に征服したというような凱歌が籠っている。正に奇想天外の一大事件がもちあがったのだ。それは如何なる大事件であろうか? ところがその後が難解だ。残っているタッタ一つのものは、曰く『獏鸚!』こいつが手懸りなのだ。なんという奇妙な手懸り! なんという難解な手懸り!……」

帆村は机の上に肘をついて、広い額に手を当てた。私はもうすっかり帆村の悩んでいる事件の中に引き入れられてしまった。

「ねえ帆村君」と私は自信もないのに呼びかけた。「ほら昔のことだが、源三位頼政が退治をした鵺という動物が居たね」

「ああ、君も今それを考えているのか」帆村は憐むような眼眸を私の方に向けて云った。「鵺なんて文化の発達しなかったときのナンセンスだよ。一九三五年にそんなナンセンス科学は存在しない」

「そうでもあるまい。最近ネス湖の怪物というのが新聞にも出たじゃないか」

「怪物の正体が確かめられないうちは、ネス湖の怪物もナンセンスだ。