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たまとりものがたり

玉取物語

久生 十蘭

「別冊文藝春秋 第二十四号小説二十人集」1951(昭和26)年10月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,495 字 · 19 页

青空文庫

。願われるなら、十月の初秋の候に事を挙げたいと存念を披瀝した。玄朴考えて、「大槻氏、其許は最初からの関係だが、御ンふぐりのふくれぐあいを測っていられたろうか。書き留めたものでもあったら、ちょっと見たい」と言うたら、大槻は書附をだして、何月何日には何寸何分、何日には何分と読みあげた。玄朴、聞いてから、指を折って数えていたが「うむ、今のところはまず鷺の卵ぐらいか。十月となると、鶴の卵ほどになろうかな。よし、十月にきめよう。それはいいが、御先方はむずむずしていられるところだから、悠長めかした話に御同心になるであろうか」そこで戸塚、「明らさまに申したら、御承服なさるはずはございませぬから、ただ、そのうちに、とだけお答えしておきます。なにをお問いになられても、そのうちに。余のことは一切申しあげず、十月までは、そのうちにそのうちにで押し通すつもり」そういうことで相談が結着した。

三月もすぎ、四月終り、五、六、七と月を越して、八月となった。殿の御物はますます増長し、小枕ほどになったことで、あおのけに寝た腹の上に、ふぐりが大々と盛りあがり、石灯籠の子持笠のように見えた。