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たまむしのおばさん

玉虫のおばさん

小川 未明

「せうがく三年生」1936(昭和11)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,466 字 · 5 页

青空文庫

ある日、春子さんが、久代さんの家へ遊びにまいりますと、

「ねえ、春子さん、きれいなものを見せてあげましょうか。」と、いって、久代さんは、ひきだしの中から、小さなきりの箱を取り出しました。

「この中に、なにが入っているか、あててごらんなさい。」と、笑いながら、いいました。

春子さんは、なんだろうと思いました。いくら頭をかしげてもわかりません。

「わからないわ。」

「きれいなものよ。」と、久代さんは、にっこりしました。

「指輪でしょう。」と、春子さんは、答えました。

「いいえ、そんなものでないの。」

「じゃ、なんでしょう。宝石?」

「宝石より、もっときれいなものよ。」

「もっときれいなもの……わからないから教えてよ。」と、春子さんは、まったく、見当がつきませんでした。

「虫よ。」

「まあ、虫? ああ、わかったわ。ちょうでしょう。」

春子さんは、宝石より美しいものは、ほかにはない。どうしても、ちょうであるとしか考えられませんでした。

「いいえ、ちがうのよ。」

「もう、私、わからないわ。早く見せてよ。」と、春子さんは、せがみました。

「玉虫よ。ほらごらんなさい。」と、その小さな箱を久代さんは、春子さんの手に渡しました。