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たまむしのおばさん
玉虫のおばさん
小川 未明
「せうがく三年生」1936(昭和11)年11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,466 字 · 5 页
」と、誠さんが、いいました。
「そうかしらん、殺すのはかわいそうね。」
「僕、殺してあげようか。」
「生かして、飼っておかない?」
「ああ、そうしようか。はちみつをやるといいのだよ。砂糖でもいいかもしれない。」誠さんは、石鹸の入っていた、ボール箱に穴を明けて、その中へかぶと虫と玉虫を入れておきました。誠さんの留守に、春子さんは、一人でかぶと虫と玉虫とが、箱の中でもだえているのをながめていましたが、誠さんが帰ると無理にすすめて、二匹の虫を原っぱへ逃がしてやりました。
ある晩のことです。春子さんは不思議な夢を見ました。夏から秋にかけて、林や、花園にきて遊んでいたちょうや、はちや、蛾や、とんぼや、せみが、だんだん寒くなるので、船に乗って暖かな南の国へ旅立つのであります。その中にもいちばん目立って美しいのは玉虫のおばさんでありました。紫色の羽織をきたおばさんは、船に乗ろうとして、
「また、来年まいります。」と、見送りにいった春子さんに、にこやかに、お別れのあいさつをしていました。すると、いつか、もちをふいて逃がしてやった茶色のとんぼが、また玉虫のおばさんの蔭から、恥ずかしそうにして春子さんにあいさつをしていたのでありました。