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「さんごしゅう」かいせつ

「珊瑚集」解説

佐藤 春夫

「珊瑚集」岩波文庫、岩波書店 1938(昭和13)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,636 字 · 6 页

青空文庫

荷風先生は毅然たる現実主義精神を抱いた散文作家であると同時に、一面には嫋々たる抒情詩人である。この両面を解して後はじめて先生が真面目に接し得られるというべきである。先生のすべての傑作はみなこの両面がさまざまな釣合を保ちながら渾然融和の妙趣を発揮している。いずれも散文精神の伴奏として陰翳のような役割をしている先生の詩情が、詩の形をとって真正面から打ち出されたものがない代りに、先生がその詩情を培い詩魂を鍛冶されるために常に読誦される海外の詩篇を、愛誦のあまり訳出されたものの一巻がある。この珊瑚集が即ちそれである。

集ははじめ大正二年四月下浣、ボードレエルに関する四葉ヴ※ルレエンに関する三葉の外レニェエの肖像以下数葉合せて十三葉の写真版を挿画とし、赤いマーブル紙をヒラに赤いクロースを背にはぎ分けた華麗な装釘で発売された。版元は籾山書店である。後年春陽堂文庫がこれを収めて普及版とした外、近ごろ第一書房が覆刻を新装上梓した。

本書は籾山版を底本として第一書房の新版を参酌の上その改訂に従い、また「菊花の歌」「あまりに泣きぬ若き時」の二篇をも加えていささか最後に出た版本たるの意を用いた。