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げんだいのしゅだい
現代の主題
宮本 百合子
「世界」1946(昭和21)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,914 字 · 24 页
てこない、ということである。たとえば、ここに一つの論文がある。書かれている要旨は進歩に目標をおいたものであり、ラディカルでさえあるものなのに、その文章の行間を貫く気魄において、何かが欠けていてものたりない。そういうことをしばしばきく。かえって、抑圧がひどかったとき、岩間にほとばしる清水のように暗示されていた正義の主張、自由への鋭い憧憬の閃きの方が、はるかに人間らしさでわれわれを撃つ力をこめていた、と。これは、ただ、かくされていた神聖さを明るみに出して見たときは、それも平凡なものとなるというだけを意味することであろうか。そうは思われない。私たちが、ものをいわされず、書かされないとき、ちょうど節穴から一筋の日光がさしこむようにチラリと洩らされる正義の情、抑圧への反抗は、いわば、人々の間に暗黙のうちに契約となったいくつかの暗号のようなものであった。義太夫ずきの爺さんが、すりへったレコードの「壺坂」をきいて自分のうちにあるうたを甦らし、ひとにはききとれにくい「壺坂」を、たのしみさえしているのと似た気の毒な事情であった。
客観すれば病的な、そういう苦しく、いとしい精神表現がたがいの癖となってしまっているとき、にわかにぱっと窓があいて、光線が一時にさしこんできたとき、火花のようだった符号を朗々とした全文に吐露しなおし