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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

それを覚悟で、たった一人でやってやがる仕事だから、嘘じゃアなかろうと思われるフシがあるじゃないか」

「なるほどね」

半平は腕をくんだ。

天草商事は第三国人と大がかりな密貿易をやっていた。その本拠は小田原界隈のさる由緒ある邸宅内にあったから、地理的には甚だ便利な取引なのである。

「ホントなら話が大きいぜ。それに相手が一人だから、秘密保持の上にも、取引としてはこの上もなく安全だね。ボクが思うには、ここは、ひとつ、スパイを使ってみようよ」

「スパイたって、スパイの使いようがないじゃないか。相手が一人で、おまけにノコノコこっちへ出むいているんじゃないか」

「だからさ。だからだよ」

半平は痩せっぽちの肩をいからせて、うれしそうに笑った。

「今夜、社の寮で、サルトル氏の歓迎会をひらくんだよ。酔わせておいて泊らせて、よりぬきの美女を介抱役につけるんだよ。惚れたと見せて安心させて、秘密をさぐるんだね」

「酔わなかったら、こまるじゃないか」

「催眠薬かなんかブッこんで痺れさしちゃえばワケないよ」

「誰をスパイにつけるんだい」

「近藤ツル子」

半平は腕をくみ、グイと胸をそらして、ニコヤカに叫んだ。