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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

「チェッ。よしやがれ。オレは反対だい」

と才蔵が叫んだ。

「スパイなんてのはスレッカラシのやることだい。ツルちゃんが頭脳優秀だって、惚れたフリだの、そんなことができるもんか。商売女と違うんだ」

「できますとも。雲さんよ」

と、半平は平然たるもの。

「由来女というものは魔物なんだよ。いかに楚々たる処女といえども、生れながらにして性愛の技術を心得ているものさ。嘘と思ったら八ツぐらいの小学一年生を一週間観察してごらんなさい。男の子はてんでギゴチないけど、女は天性の社交術と自然の媚態を与えられていることが分るからさ。雲さんも恋に盲いてビジネスを忘れてはいけないね。また、恋人をいたわることは、恋人を信頼することよりも劣っているのだよ」

「チェッ。半可通をふりまわして、あとで目の玉をまわしたって追っつかねえや」

しかし才蔵はまだ一方の心にシメシメ、ツルちゃんがサルトルと箱根へ行くことになったら、その時こそオレがうまくモノにしてやろうとほくそえんでいる。

そこで半平はツル子をよんで、事情をよく説明してきかせた。

「いゝかい。ツルちゃん。わかったね。恋人のように、また妹のように、つまり一言にして云えば親友のように、だね。