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げんだいにほんのしそうたいりつ

現代日本の思想対立

戸坂 潤

「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页

青空文庫

ことだ。私有財産制の否定は共産主義だから、従ってそれは国体に、日本国民精神に悖るものだというのである。幸いこれは滝川問題(乃至京大問題)ほど重大な社会問題にならなくてよかったが、滝川教授を馘にした因をなす蓑田胸喜氏なる人物は、今度は東大の末弘巌太郎教授を持ち出した。しかもこれはある程度まで成功したように見える。

博士の著書で十年ほど前の『法窓閑話』の内容を種に、教授は出版法違反、治安維持法違反で告発されたのである。共産主義に共通なものがあるというのである。

そこで検事局は教授を召喚して現在における教授の心境を訊ね、教授は後から弁明と心境報告との手記を提出したが、その結果によって、教授の転向が明らかになって教授は不起訴となった。蓑田氏でさえ気がつくことを末弘教授が気がつかなかったというのは、余ほど不思議な現代の一現象だが、それだけ国民精神の恩沢の浸潤は不公平なものと見える。監視を厳重にしなければならない理由だ。

尤も大学教授だろうが博士だろうが、決して油断はならないので、同じく東大教授横田喜三郎氏はJOAKの青年講座で、事もあろうに国際連盟脱退問題に関して平和論を放送してしまった。