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げんだいにほんのしそうたいりつ
現代日本の思想対立
戸坂 潤
「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页
こうしたものは単に日本現下の文化の衣裳を支配するだけで、文化の真に科学的な核心をそう容易に犯し得るものではない。日本の権威ある科学者の心事に於ては、まだナチス風の「ドイツ物理学」や「ドイツ数学」に類する「日本自然科学」などは目論まれるには至っていない。この依然として健全な科学的良識に由来して、若干の新鋭な自然科学者は唯物論(唯物弁証法)に意識的に近づこうとしているのであり、そして多少意識の制限された自然科学者は、何等かの唯物論代用物に近づこうとしているのである。いずれにしても広義及び狭義に於ける科学の生命、科学的精神、を保持発展させるものとして、期待を有たれている思想的根柢は、今日の処唯物論以外には見当らぬ、と云っても決して誇張ではない。この事実を承認しない者がいるとしたら、恐らくそれは何等かの卑俗な常識に叩頭しているからであろう。
だがいずれにしても、今注目すべきは自然科学の哲学への連絡という一事である。すでに社会科学及び芸術理論乃至文化理論は、良いにつけ悪いにつけ、哲学との交渉を著しく保って来ている。丁度生産技術学に於て自然科学者が持っていると同じ実際性を有った社会科学者は、アカデミーに於ても民間ジャーナリストに於ても普通の存在である。