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げんだいにほんのしそうたいりつ

現代日本の思想対立

戸坂 潤

「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页

青空文庫

七 自由排撃三法案

(一九三六・一一)

七 自由排撃三法案

従来の諸政府の秕政を一新すると称して登場した広田内閣は、組閣第一番に、自由主義を認容しないというような、妙な声明を発表した。この点は特別議会でも問題になったが、首相の答弁を見ても自由主義というのが何であるかは殆んど全く理解出来ない。

自由主義が社会の矛盾の一切の責任を負わされたように評判を悪くしたのは、いうまでもなく例の一部の革新主義者の口から出たことで、つまるところ「青年」的な片言にすぎなかったのだから、これは真面目な用語として用いることは意味がないことだったのだが、ところが革新熱の伝染ですっかり逆上してしまっていた組閣当時の首相は、大人げなくもこんな片言を、堂々たる一国の政府方針声明の内に、ウッカリ書き込んでしまったわけである。

今日自由主義の活きた科学的分析は、まだ決して充分に行なわれ得てはいない。まして常識は自由主義が何であるかを少しも理解してはいない。だからこの自由主義が良いとか悪いとかいっても、実は少しも広田内閣の政綱の説明などには、理論上ならないはずだったのである。

だが、今日の日本の政治家や社会的有力分子の一つ一つの言葉を、理論的に真面目に受け取って頭をひねることほど野暮なことはない。