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げんだいにほんのしそうたいりつ

現代日本の思想対立

戸坂 潤

「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页

青空文庫

で治安を妨害するらしいと判定されるかも知れない。判定には無論当人との相談は無用だ。そう判定されたが最後、三年以下の懲役や禁錮を食わねばならぬ。

またウッカリ「文書図書を出版または頒布」しても同様だ。さらにこの出版物に発行者の氏名住所がなかったり誤っていたり、出版法や新聞紙法による納本をしなかったりしようものなら、五年以下の懲役か禁錮を食う。

出版物の発行者の氏名住所がインチキだったり、納本しなかったりすることは取締る必要があるが、そういう取締りをするものが出版法や新聞紙法ではなかったか。して見るとこの法律の要点はここにあるのではなくて、人心を惑乱し軍秩を紊乱しまたは財界を攪乱する「目的」を持つことと、さらにこれが治安を妨害「すべき」性質を有つこととに、あるわけだが、しかし出版物ならば発売禁止や頒布禁止は従来のお手のものなのだから、要点は出版物にあるのではないということになる。すると流言浮説がこの法律の最後のねらいどころだといわねばなるまい。

政府の提出理由の説明によると、不穏文書(相沢中佐の判決理由公表中に不穏文書の件が明記してある――三六年五月十日付都下各新聞を見よ)の横行が例の不祥事の一原因だというのだが、寺内陸相がいっている通り、この法律がなくても粛軍には大してさしつかえはないそうだ。