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こはくのパイプ
琥珀のパイプ
甲賀 三郎
「新青年」1924(大正13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页
しかし兎に角、現に賍品を懐にしていたのであるから、拘留処分に附せられる事となり、留置場に下げられた。
所が又々一事件が起った。夜半の一時頃、留置場の番人が見廻りの際、特に奇怪なる青年として充分注意する様に云い渡されていたので、注意すると、驚くべし、岩見はいつの間にか留置場から姿を消していた。
警視庁は大騒ぎとなった。重大犯人を逃がしてはと直ちに非常線が張られた。然しその儘其夜は明けた。そうして午前十時頃彼岩見は彼の下宿で難なく捕えられた。
刑事は無駄とは思いながらも彼の下宿に張り込んでいると、十時頃彼はボンヤリした顔をしながら帰って来たのであった。
彼の答弁は又々係官の意表に出たものであった。十一時近く、巡査が留置場に来て、一寸来いと云って連れ出し、嫌疑が晴れたから放免すると云って外へ出してくれた。夜も更けた事ではあるし、幸い懐に金もあり、且はあまりの馬鹿々々しさに、一騒ぎ騒ごうと思って、彼はそのまゝ電車に乗って品川に至り、某楼に登って、今朝方帰って来たのだと云う。
「一体あなた方は」彼は不足そうに云った。「私を逃がしたり、捕えたり、全で私を玩具になさるじゃありませんか」