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こはくのパイプ

琥珀のパイプ

甲賀 三郎

「新青年」1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页

青空文庫

それからあとは容易です。長方形の片隅の矢印をした符号は、石段の角を示します。S、S、Eは磁石の南々東です。31は無論三十一尺、逆の丁字形は直角です。W―15は西へ十五尺です。即ち石段の角から南々東へ三十一尺の地点から、直角に西の方へ十五尺と云う事です。岩見が宝石を隠した時分には、その土地は空地で石段だけは既に出来ていましたが、一面の草原であった事は、あなたの方がよく御存じです。岩見は万引事件で禁固の刑を受け、宝石を取り出す時機を失している中に、その土地に福島の家が建ちました。そこで彼は出獄すると福島の宅へ目をつけ、機会を待っていましたが、遂に留守番にモルヒネ入の菓子を送り、麻酔させた上で、ゆっくり宝石を取り出そうと企んだのです。そして暴風雨を幸い、忍び込んだのです。ところが相手はモルヒネで寝ているどころか、あべこべに斬りつけられる様な目に逢ったのです。床板の上っていたのはそう云うわけで宝石を探そうとしたのです。

所が宝石は如何したのでしょう。

それは私がたしかに頂戴しました。もう既に御気付きと存じますが、私が××ビルディング白昼強盗の本人です。

お驚きにならないように、尚一つには私の手腕を証拠立てるためと、一つには私の永久の記念のために、あなたの内ポケットに例の琥珀のパイプを入れて置きました。