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ことのそらね

琴のそら音

夏目 漱石

一个刚毕业的上班族抱怨忙到快崩溃,却发现朋友居然悠闲地研究幽灵书?这种从容让人又羡慕又恼火,但背后的秘密或许更让人好奇!

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,985 字 · 42 页

青空文庫

合わす瞳の底に露子の青白い肉の落ちた頬と、窪んで硝子張のように凄い眼がありありと写る。どうも病気は癒っておらぬらしい。しらせはまだ来ぬが、来ぬと云う事が安心にはならん。今に来るかも知れん、どうせ来るなら早く来れば好い、来ないか知らんと寝返りを打つ。寒いとは云え四月と云う時節に、厚夜着を二枚も重ねて掛けているから、ただでさえ寝苦しいほど暑い訳であるが、手足と胸の中は全く血の通わぬように重く冷たい。手で身のうちを撫でて見ると膏と汗で湿っている。皮膚の上に冷たい指が触るのが、青大将にでも這われるように厭な気持である。ことによると今夜のうちに使でも来るかも知れん。

突然何者か表の雨戸を破れるほど叩く。そら来たと心臓が飛び上って肋の四枚目を蹴る。何か云うようだが叩く音と共に耳を襲うので、よく聞き取れぬ。「婆さん、何か来たぜ」と云う声の下から「旦那様、何か参りました」と答える。余と婆さんは同時に表口へ出て雨戸を開ける。――巡査が赤い火を持って立っている。

「今しがた何かありはしませんか」と巡査は不審な顔をして、挨拶もせぬ先から突然尋ねる。余と婆さんは云い合したように顔を見合せる。