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びわこのみず
琵琶湖の水
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1947(昭和22)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,773 字 · 20 页
最初の零を入れて、零が十二つく。これを便宜上1×10-12メートルと書く。センチに直すと1×10-10センチとなる。言葉でいえば百億分の一センチである。「一センチの百億分の一だけ水嵩が増す」という答が馬鹿げていることは、誰にもすぐわかるであろう。そういう極微の量はどうにでもなるものであって、例えば湖面からの蒸発量などにくらべても、問題にならない量である。
蒸発量は天候によって広い範囲に変ることはもちろんである。大ざっぱにみて、毎日の気象台で測られている蒸発量の平均を、一ミリ余りとみる。湖面からの蒸発は、陸上で蒸発計で測られる値の八割くらいとみられるので、話を簡単にするために、一日に一ミリ蒸発するとする。これは非常に少なくみての話である。しかし僅か一日一ミリの蒸発でも、さっきの百億分の一センチとはひどいちがいである。小便をするには、時間がかかる。それを三十秒かかったとすると、その三十秒間の蒸発量は
数式((1×30)/(24×60×60)ミリ≒3×10-4ミリ=3×10-5センチ)の図
3×10-5センチ、即ち十万分の三センチである。これを前の百億分の一センチとくらべてみると、約三十万倍に当る。