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びわこのみず
琵琶湖の水
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1947(昭和22)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,773 字 · 20 页
だ」という論である。ところがそういう理論的な問題としたら、この答案は、一層いけないのである。
というのは、百億分の一センチという長さは、理論的にいっても、意味のない数字である。それは水の分子の大きさよりもずっと小さい数字なのである。実は分子どころではなく、それを構成している原子よりもさらに小さいので、問題にならない話である。水の分子は酸素原子一つと、水素原子二つとから出来ている。その水素原子はさらに原子核と外電子とから成っているので、その両者の間隔、即ち原子の大きさが、大体10-8センチ、即ち一億分の一センチである。前に挙げた百億分の一センチというのは、この原子の大きさのさらに百分の一なのである。そういう量が、水嵩という言葉には、全く意味が無いことは明白であろう。
それでこの問題は、実際的にはもちろん、理論的にも成り立たない問題である。即ち水嵩ということを問題にする以上、問題自身が意味のないものなのである。少しでも物が加わった以上、どんなに少なくとも少しは増すという常識論の誤謬は、量の観念が無いところからきている。
この例は、一つの笑い話としてはなかなか面白い話である。