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せいあらば

生あらば

豊島 与志雄

「文章世界」1917(大正6)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,046 字 · 47 页

青空文庫

ゆきづまった未来が彼を脅かした。其処にはもはや、羽島さんに助けを与えた輝いた力は無かった。貪る眼附を以て彼は自分の周囲を見廻した。そして凶なる陰影に満ちた周囲のうちに、最早一人で立ち得ない自分の心を見た。心のうちには重く濁った雰囲気が澱んでいた。

壮助は殆んど盲目的に、川部に向って手紙を書いた。結果の如何は問う所でなかった。ただそうすることが自分の勤めででもあるかのように。――手紙の中に彼は今迄の事情を述べて、何処からか金の融通が出来る途を紹介してくれるように頼んだ。詳しいことは逢って云うが先ず手紙でとりあえず願う旨を附記した。

手紙を出してから、彼はもう凡てのことを投り出したような安易を覚えた。そして光子の許に急いだ。

肉の落ちた眼の大きくなった光子の顔を彼はじっと見つめた。光子の露わな瞳が彼の視線を吸い込んで、謎のようにぼんやり其処に在った。

「あたしもうすっかりいいような気がするわ。」

と光子は云った。それから何かを探し求めるような風で一寸言葉を切ったが、また云った。

「よくなったような気がすると、急に亡くなったお祖母さんのことなんか思い出してよ。