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いきたにんぎょう
生きた人形
小川 未明
「サンデー毎日 7巻49号」1928(昭和3)年10月28日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,925 字 · 10 页
「お母さんがなくなられたので、私は、兄さんをさがしに、故郷を出ました。しかし、旅をしている間に、持っているだけの旅費を使いはたしましたから、この町で働いて、また旅をしようと思っています。」と、答えました。
「それは、感心なことだ。けれど、あてもなく歩いたって、兄さんにめぐりあうことは、むずかしいもんだ。」と、おばあさんはいった。
これを聞くと、少女は、月の下で、霜になやんだ弱い花のようにしおれてしまいました。
「おばあさん、どうしたら、私はこの世の中で、ただ一人の兄さんにめぐりあうことができるでしょうか……。」と、訴えたのです。
白髪頭のおばあさんは、考えていましたが、
「それは、方々の人の出入りするところへいって、いろいろの人に、おまえさんの兄さんの話をして聞いてみなければ、わかりっこはないよ。私がいいところへつれていってあげるから、明日の晩に、町はずれの橋の上にいって待っておいで……。きっとだよ。私は、おまえさんの身の上を悪くとりはからわないから。」と、おばあさんはいいました。
少女は、しんせつなおばあさんだと思って、その夜は別れて帰りました。
翌日になると、少女は、人形のかわりになって、店さきでつとめるのも今日かぎりだと思うと、町の景色を見るにつけ、なんとなく、もの悲しかったのであります。