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いきたにんぎょう
生きた人形
小川 未明
「サンデー毎日 7巻49号」1928(昭和3)年10月28日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,925 字 · 10 页
」といいました。
その晩のことであります。あちらには、港のあたりの空をあかあかと燈火の光が染めていました。そして、汽笛の音や、いろいろの物音が、こちらの町の方まで流れてきました。また一方は、はるかに、青黒い山脈が、よく晴れた月の明るい空の下に、えんえんと連なっていました。その広野を青い着物をきて、頭に淡紅色の布をかけて、顔を隠し、白い馬に乗って馬子に引かれながら、とぼとぼと山の方を指してゆく女がありました。
馬はだまっていました。乗っている人もだまっていました。そして、馬を引いてゆく人もだまっていました。ただ月の光に、あたりはぼうっと夢のようにかすんで、はてしもない広い野原に、これらの人たちは、絵のごとく浮いて見えたのです。
このとき、黒い人影が、その後を追ってきました。二人、三人、めいめい手に棒を持ってわめいてきました。とうとう彼らは、馬に追いつくと、行く手をさえぎって、
「青い着物をきている。この女だ。もうけっして逃がしはしないぞ。」と、追ってきたものどもはいいました。
馬子は、たまげて、その人たちのようすをながめました。
「おい、この女をどこへつれてゆくつもりだ?」