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いきつつあるじいしき
生きつつある自意識
宮本 百合子
「関西学院新聞1948(昭和23)年5月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,327 字 · 9 页
そういう意味で、一九四五年以後日本の若い精神をとらえた自我自意識の問題は、日本の悲劇として独特のニュアンスをもった。「チボー家の人々」のジャックはそのときまでには次第に確立しかかっていた人間性、よりひろくより総合された社会的理解、理性に立って一大衝撃としての第一次大戦を経験した。悲惨事ながら、それは悲惨事として客観されるだけ成長したジャックの精神によって、経験された。したがって、ジャックその人の生死にかかわらず、人類の経験として、それは社会的に摂取された。
日本の戦時中に育った若い心は強いて無智に置かれた。非現実のヒロイズムで目のくらむような照明を日夜うけつづけて育った。自分としての判断。その人としての考えかた。社会生活におけるそのことの必然を認めることさえ罪悪とした軍部の圧力は、若い精神に、この苛烈な運命に面して自分としてのすべてに拘泥することをいさぎよしとせず、それをみにくいことと思わせるほどに成功していた。だから一九四五年以後にこれらの若い精神がにわかに自己の人間性・個性が社会的に復権することの当然さを発見したとき、さけがたい混乱を生じた。